エゾエノキ苗づくりと学校林への移植
エゾエノキの種子拾い~播種・育苗
オオムラサキの幼虫の食樹(食草)となるのは、エノキとエゾエノキである。 本州にはエノキとエゾエノキどちらも自生しているが、北海道にはエゾエノキしか自生していない。 北海道でオオムラサキが生息するためにはエゾエノキの存在が不可欠となる。
札幌市内の藻岩山軍艦岬には直径50㎝以上のエゾエノキの巨木が自生している。 斜面の南東部から平地にせり出して生えているため、比較的容易にエゾエノキの種子を採取することができる。 ただし、採種時期は下草が出ない早春でなければ落ちた種子が新緑に飲み込まれてしまい探すことは困難になる。
2005 年 4 月 27 日(1・2 年生) および 2009 年 5 月 8 日(3・4 年生)に生徒による採種を実施した。 拾って来た種子は、2005 年 5 月に学校敷地内に苗床を設置し、生徒の手によって直接播種作業を行った。
箱崎氏は2004年秋より、自宅庭でエゾエノキの種子のプランターと露地の播種試験を実施していたが、発芽率はどちらも変わらず越冬後にほとんどの種子が発芽した。 この播種試験で生育した苗木も、学校敷地内の苗床に移植した。
学校林への移植
学校敷地内で育苗した苗木は、2005年11月から学校林に移植を開始した。 定時制の環境教育活動として 2005 年から 2008年までに約 180 本(651 ㎡)、 2008 年から 2011 年には札幌南8期~11期の卒業生による卒業50周年の記念植樹も加わり約 220 本(2,200 ㎡)、合計約400本を植樹した。
2005年は初雪の中での移植作業となった。 全校生徒が参加して50本の苗木を移植した。
2006年は全道的に荒れ模様で、生徒たちは時折激しい雨の降る中でずぶ濡れになりながらも30本苗木の移植作業を終了した。
作業の当日は、学校林近くの札幌市立有明小学校までバスで移動、 そこから植林の現場まで道具等を持って徒歩で向かい、毎回 2 時間ほどの作業を行った。
その後、毎年のようにエゾシカやエゾユキウサギの食害、下草刈り作業での誤伐や、自然枯死があるものの、200 本ほどが現在も植栽されている。
除草作業
2006 年からは植樹に加えて除草作業も実施した。
エゾエノキの苗木を移植した場所は、もともとススキとチシマザサが鬱蒼と茂っていた場所で、木陰はあまりなく、除草作業は夏の炎天下での過酷なものであった。 エゾエノキの苗木がある程度大きくなるまでは除草作業は必要不可欠な作業である。
活動に参加した生徒たちの感想文(原文のまま)
【感想文①植樹】(2005 年度、2 学年、女子)
エゾエノキの植林をする区域に着き、まず最初に、刈ってあった草などをよけました。私は軍手を忘れてしまったので素手でよけていましたが、草などが手に刺さりとても大変でした。 そして穴を掘り始めると、運悪く根っこがいっぱいある所を掘ってしまいました。全然掘れなくてすごく大変だったので先生達に手伝ってもらい、どうにか穴を掘ることができました。掘った土から根っこをよけておき、穴に苗木を入れて、真っ直ぐになるように手で押さえながら、根っこをよけた土をかぶせる作業がとても大変でした。素手で土をかぶせ終り、苗木の周りを 足で軽く踏みました。素手で土をかぶせていたので、手が土だらけになり、雪で手を綺麗にしようと思ったのですが、手が凍りそうになってあまり綺麗にすることができませんでした。最後にスコップについている土を草や雪などで落したけれどなかなか綺麗にならなかったので大変でした。山を下りる時も雪で何回も滑って転びそうになって大変でした。エゾエノキの植林は初雪が降ったり、寒かったり、滑って転びそうになったりと、大変だったけれど楽しかったです。
【感想文②植樹】(2005 年度、1 学年、女子)
植林作業をする場所は思っていたより荒れ果てていた。天候は最悪の雪だった。なんでこんな日に植林作業をしなくちゃいけないんだろう、と思っていた。だけど、とりあえず作業を始めた。まずは木の枝や草などを運んで除けることからだった。地面が見えないくらい大量の枝や木、歩くと枝が足に刺さって痛かった。その作業が終わると、やっと穴掘りが始まった。 藤田さんと中川さんと私の三人で二ヵ所穴を掘ることになった。掘ってはみたものの、根っこのような物がじゃまで、なかなか思うように作業がすすまなかった。スコップの上にのって体重をかけてみてもあまり深く掘ることができず、三人でやっていたのにほかの所より作業が遅れていたようだ。途中で先生が助けに来てくれて、やっと一つめの穴が終わった。気がつくと雪がやんでいた。二つめの穴もなんとか掘り終り、ズボンがどろだらけになっていた。 苗木を植えて作業終了。やっと帰れる。かなり疲れていた。山を下りる途中、太陽がでてきて、葉っぱについた雫がキラキラ光ってとてもきれいだった。それを見て、来てよかったかも、と思いました。
【感想文③ 植樹】(2006 年度、2 学年、男子)
思い出した中でも一番の思い出は、やはり学校林に植樹しに行ったことです。なんといっても穴掘り。あれはしんどかった。 全然掘り進まないのです。僕の予想をはるかに越え、地面は固かったのです。ところが、掘っていくにつれ、 段々とコツがわかったのか、柔らかい所まで掘り進んだのか、今となっては知る術もないのですが、それほど労せずズイズイと掘り進めるようになったのです。少しずつ楽しくはならなかったのですが、掘るのに夢中になってしまい、 エゾエノキのことなんてすっかり忘れてただひたすら掘っていきました。 そうしてある程度掘り進み、だいたい 40 センチメートル位まで掘れたので苗木を植え、「ああ、やっと終わったのか…。」と、なんとも言えない達成感と余韻に酔いしれていた時に、「おーい、こっち も手伝ってくれー。」と声をかけられた瞬間の、 あの絶望感といらだちは今も忘れられません。 かなり疲れましたが、達成感を得られたので、 いい思い出になったと僕は思っています。
【感想文④ 除草・植樹】(2007 年度、2 学年、 男子)
バスを降りると生憎の雨。「やってられ ない」と正直思っていた。みんなスコップを手に持って森林に向った。 雨が降っているので足どりも重くテンションも低いままとぼとぼ あるいて目的のエゾエノキを植える場所についた。これでここに来たのは二回目だが、一回目はもの凄く暑くて、水分不足で死にかけた。一 回目の除草作業はとても過酷で辛いものであんな面倒なことは、人生に一度あるかないか…ぐらい面倒なことだと思った。 二回目は苗植え。 土を掘り返して、苗をうめて、そのあと苗がすれないように、土をきちんと固めて終了。一回目とくらべ、楽なのだが天候がひどすぎる。雨と風しまいには雷、風邪をひくんじゃないかぐらいのひどい天気だった。そして今日集会があって全国表彰とかに選ばれたらしい。まあやったことは無駄にはならなかったということだ。
【感想文⑥ 植樹】(2008 年度、1 学年、女子)
学校林に行くのは二回目で、だいたい要領は分かっていたんですが、冬ということで雪が積もっていて作業しづらいのではなど心配はありました。しかし、いざ行ったら天気にも恵まれ、とても作業しやすい状況でした。先生の説明を聞き、やり始めたんですが、初めての植林作業ということもあり、なかなか上手くできず困っていました。隣で作業していた先輩に目をやると、要領よくきれいな穴を掘っていて、さすが先輩だなと思い、時々先輩の様子を見ながら作業を進めていました。土が固かったり、なかなかうまくいきませんでしたが、少しずつ作業を進めようやくきれいな穴が掘れました。暑さと戦いながらも作業をしました。そして穴にしっかりエゾエノキを植え終わりました。その時私は自分の手でエゾエノキを植えたことに対し、 すごく達成感に満ち溢れました。とてもやりがいがあったなと思います。自分の名前を書いた 木札を土に埋めたとき改めて自分が植えたんだなと実感し、なんだか嬉しくなりました。そしてこのエゾエノキがどうか無事に育ちますようにと心から思いました。エゾエノキの植林作業に参加したことで、少しの間でも優しい気持になれてよかったなと思います。この作業を通して学校林の大切さもわかりました。この次、学校林に行った時、自分の植えたエゾエノキがしっかり育っていればいいなと思うばかりです。
【感想文⑦植樹】(2009 年度、2 学年、女子)
昨年植えたエゾエノキが学校林にあってこうやって何十年も育っていくんだなと思い、嬉しくなりました。そして新しいエゾエノキを植えてまた同じように成長するんだなと思いました。エゾエノキを植えるとき一人で植えることができず、周りにいた人に助けてもらいながら植えました。一緒に一本の木を植えるのは、なかなかない経験で、この学校ならではの経験だと思いました。普段あまり話さない人と一緒に話しながら木を植えるということができて、いい思い出が出来ました。また、これから色々な人とエゾエノキを植えて、交流していきたいと思います。今回のエゾエノキの体験は、雨も降りましたが、自分の中では晴れていたと思いました。これからまた、エゾエノキがどんどん成長していくと思います。そして自分自身もエゾエノキと一緒に成長していきたいと思います。
【感想文⑤ 除草】(2008 年度、4 学年、女子)
例年どおりバスに乗り、もうだいぶ見なれた道を進んで行きました。最初のころは長く感じた道程も、今ではなれたせいか思っていたより早く着いておどろきました。除草作業もなれたもので、何だか何にも考えず無心でひたすら土を掘り返したり、草を引っこ抜いていました。 ふと、周りを見ると先生がカメラを持ってこっちに来ました。写真を撮るぐらいなら手伝ってほしいと心から思いました。別にたいした思い出にもならないから写真なんていらないんじゃないかなと私はほとんど一人で掘り続けていました。あんまり終わりそうな感じがしなかったので休憩も少ししかとりませんでした。それにしても一年生だった時に植えた木があまり成長していないような気がします。何十年かしたらちゃんと立派な木にそだつのでしょうか。みんなが一生懸命に植えたので、全部の木が元気に育ってくれたらいいなと思いました。 〔中略〕 また秋に行くのでしょうか。それとももう行かないのでしょうか。行くと、言われると気が重くなりますが、行ったら行ったで、それなり楽しい学校林作業、私はもしかしたらわりと好きなのかもしれません。
【感想文⑧除草】(2010 年度、2 学年、女子)
エゾエノキが植えてある場所までスコップとスポーツドリンクを持って行ってみると、たくさんの笹や雑草が生い茂っていました。私はこんなにたくさん生えている雑草を取り除くことが出来るのだろうか、と疑問に思いました。先生の話を聞いて、エゾエノキの植えてある場所を確認すると、早速、雑草を取り除き始めました。 普通の雑草はまだ簡単に抜くことができるのですが、笹は違いました。スコップを使っても使っても抜けなかったのです。根っこが広がっているものなんて、頑張っても上の葉っぱが抜ける位でした。エゾエノキの近くに生えている笹は本当に苦労しました。何故かと言うと、エゾエノキの近くでスコップを使うと、根っこを傷つける恐れがあるからです。私は気を付けて笹を取り除いていきました。大作業が終わって周りを見回してみると、最初見たときの雑草は全くと言っていい程ありませんでした。今年の作業はあっと言う間に終わりました。学校の人達で頑張ったおかげだと思います。
【感想文⑨ 除草】(2011 年度、2 年、女子)
当日の朝、学校の前に着いた時ちょうど雨が降ってきたので、学校林の作業が大変そうだなぁと思いながらバスに乗りました。でも有明小学校に着いて、バスから降りた時には、雨はやんでいました。それにすごく暑かったので、これはこれで作業が大変そうだなぁと思いました。それぞれの準備をしてから、学校林の山を登って行きました。今回の作業は草刈りでした。 今回も、一人一人、使う道具を持って登って行き、自分の作業する場所に着いたあと、作業を始めていきました。草を刈る道具は、今回はスコップではなかったので、使い慣れていなく、初めは少し大変でした。でも、慣れてきたら、草がうまく刈れるようになってきたので嬉しかったです。それに、大変なだけじゃなく、楽しいなぁと思うようになりました。今回は、今までの学校林作業に参加してきた中で、一番、暑い中での作業のような気がしていました。でも、今回の作業も、前回や、その前の学校林作業と同じように、大変な作業もあったけれど、途中で楽しいなぁと思いながら作業を進めていけたので、よかったです。今までの学校林作業では、植林作業や除草作業、キノコの植菌作業、草刈りなど、いろいろな作業がありました。今回は草刈り作業だったけど、次回の作業は何だろう?と楽しみになりました。
【感想文⑩ 除草】(2012 年度、1 学年、女子)
六月二十八日、初めての学校林作業は快晴で、とても暑かったです。バスが到着して降りると、日光がとても強く照りつけていて、地獄のようでした。それから、軍手と鎌、飲み物を渡されて除草する場所へ向かいました。坂道を登ると、ピンク色のテープがついている木がいくつもありました。作業の説明が終わった後、 すぐに除草作業が始まりました。最初はあまりやる気がなく、つまらなかったけれど、雑草を刈っていくうちにだんだんと楽しくなってきて、さっきから気になっていた暑さも、全く気にならずに夢中で刈っていました。そして気がつくと、周りはさっぱりとしていて少し驚きました。時々、日陰で休憩していると、向こうの方でオオムラサキの幼虫がいると声がしたので行ってみると、かわいい幼虫がいました。そこからは、いろいろな虫を探していました。七月十九日、二度目の学校林作業の天候もとてもよかったです。日差しは強かったけれど、前回よりも気温は少し低くて、とても作業がしやすかったです。今回はエゾエノキの場所に着いてから、すぐに除草作業が始まりました。前回、学校林作業に行って、とても楽しかったので、最初のほうから気合いを入れて除草作業をしていました。すると切り株のような物からいくつものまだ小さい木が生えているのを見つけました。前回では見つけられなかったような物を今回はいくつか見つけることができて、とてもワクワクしました。
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