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オオムラサキの翅の構造色の研究

オオムラサキの研究も多岐にわたり、全日制科学部では電子顕微鏡でオオムラサキの鱗粉の断面を撮影し、結果をまとめた。 
科学部の担当者の一人、岡田夏実さん(2年)は「鱗粉は単なる粉だと思っていました。 でも電子顕微鏡で見ると、鳥の羽毛や魚のうろこと同じように、チョウの体を守る大切な役割があることが分かりました」と話す。

科学部鱗粉研究1

科学部鱗粉研究2

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オオムラサキ、未来の学校林をはばたく

川岸 祐輝(南62期)

  オオムラサキは日本の国蝶である。 私が科学部に所属していた2009年、当時私たちは前年度から引き続きオオムラサキの研究を高文連に向けて行っていたが、この年は新たにオオムラサキの翅の「構造光沢」についての研究に重点を置くことにした。 オオムラサキには、オスには美しい青紫色を、メスにもオスほどではないもののわずかに赤紫色を放つ翅がある。 しかしこの蝶の翅の色素には実は青紫色・赤紫色の色素は含まれていない。 それらの色に見える原因は色素によるものではなく、「構造光沢」と呼ばれる物理的現象による色である。 実際の色素の色は異なるが、オオムラサキのリンプンの構造によって「構造光沢」が生まれ、美しい色が見えるのである。

  研究のための情報収集を行っている中、科学部顧問の箱崎先生が講師をしていらっしゃる酪農学園大学で電子顕微鏡を使わせていただけることになり、夏休みに科学部部員で酪農学園大学を訪問し、オオムラサキの翅のリンプンを実際に観察することができた。 無論、高校生であった私たちの中に電子顕微鏡を扱った経験のあるものはいなかったが、酪農学園大学の先生方や通われている科学部OBの方々から親切に使い方を教えていただき、美しい構造を観察することがかなった。 そのおかげで、私たちは高文連で無事発表することができた。

  観察の結果判明したことは、オオムラサキのリンプンは「構造光沢」を持つ部分と待たない部分で、リンプンの構造が大きく異なることだった。 「構造光沢」を持つ部分では、縞模様状の構造をとる一方で、持たない部分では網目状の構造をとっていた。 そしてこれからの課題として、リンプンの構造の違いによって構造光沢の有無が決まる原因を調べる段階に入っている。

  ところで今までオオムラサキの話をしてきたが、実はこの話は学校林とも深い関係がある。 私たちが行っているオオムラサキの研究は、生態・形態の調査も重要な目的の一つであるが、その先にはオオムラサキを学校林で再び繁殖させるという目標がある。

  オオムラサキはかつて北海道の多くの森林に生息していたと考えられているが、19世紀以降の開拓や高度成長の際に森の多くが伐採されてしまった。 そのため札幌周辺のオオムラサキの個体数も減少してしまったのではないか。 それならば、かつては学校林においても数多く生息していたと考えることができる。 そこで学校林から近距離の位置に生息するオオムラサキを放蝶しようという計画がある。

  しかし、ただ放蝶しても十分に繁殖できるとは限らない。そこで科学部は学校林の環境の状態についての調査やオオムラサキが繁殖できるような森づくりを、南高の一員として行っている。 私の先輩方により学校林調査隊が結成され、科学部の学校林調査もより積極的に行うようになっている。 幼虫の生育に必要なエゾエノキの苗木の栽培も現在進行中である。 

  明治44年の誕生以来、学校林は我々学生とともに歩んできている。 最初は木材生産のため、現在では森林の生態系や多様性を学ぶことができる大切な「財産」となっている。 私たち南高生は現代まで続く貴重な教材に触れることができる。 それは100年前の札幌尋常中から現在の南高生へ、そして未来の南高生へと続いていく「財産」である。 私は未来において、今よりさらに豊かになった学校林の中で、オオムラサキが優雅に飛翔することを確信している。
最後になったが、研究の際私たちに協力してくださった、科学部の顧問の先生方、諸先輩方、酪農学園大学や各団体の皆さん、ありがとうございました。
 

この研究による受賞履歴

平成22年度 第49回全道高等学校理科研究発表大会
オオムラサキの生態 ~第3報~ 鱗粉の研究 総合賞
発表生徒 北海道札幌南高等学校科学部 第2学年 岡田夏美

平成22年度 日本学生科学賞:北海道読売新聞社賞
オオムラサキの雌雄判別について~視覚的な要素に着目して~
北海道札幌南高等学校科学部 第2学年 岡田夏美
主催 北海道読売新聞社賞
 

 

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